昨年、シネマヴェーラのソヴィエト映画特集で、沢山の素晴らしい映画を観る事が出来た。
今年は、映画館に足を運ぶことがほとんど出来なかったが、先日、炎628 を観る事が出来た。
炎628は、私には「徹底したリアリズム」を持って描かれた作品とは思えない。
主人公たる少年と村人達の悲壮感や虚無感に満ちた表情を繰り返し映し出す演出よりも、むしろ蹂躙された村で唯一暴行を受ける事なく放置された認知症らしい老女の微笑みにこそ、捉えがたい真実めいたものを感じた気がしたから。
それ以外は通り一遍、戦争における残虐性を大仰な扇動的な演出で描いているだけだと思った。いや、通り一遍だからこそ、平たく「徹底したリアリズム」なんて評されるのだろうか。
今日、戦火を超えて を観た。
素晴らしい映画。
印象深い場面があった。
極寒の戦地に楽士隊が慰問の為にやって来る。少女が嬉々として新年の始まりを告げ、そして眠る兵士達を前に楽士隊がグルジアの音楽を奏でる。慰問団一行の少女が手を叩いて一番に楽しんでいる。
それは儚くて愛おしいような特別な時間で、ああ映画だ、と思った。
笑える場面もたくさんあって、
戦地に行って匍匐前進しながら、突然土の良し悪しについて語り出す爺さんに笑ったし、ぶどうを戦車で踏みつけた兵士を思いっきりぶった時も、殴り方が手加減ない感じで面白かった。
あと、最後の方、銃撃戦の合間に兵士達が交わした言葉。良かったな。
「何か良いニュースはないか」
「もうすぐ春だ」